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シージeスポーツ・ライセンス詳解(なぜチームは北米リーグを去ったのか)

eUnitedやTeam Reciprocity、Luminosity Gamingのような団体・ロースターに何が起きたのか。今回はライセンス制度について見ていきたい

以下の内容はSiegeGGによるグローバル・ルールブックの解説を兼ねており、本記事の正当性はUbisoftの内部情報ならびに承認事項とは関連がありません。本記事内に誤報として検証しうる点があった場合、お知らせいただければ可及的速やかに訂正致します。

昨年のPittsburgh Embersの一件の直後、ESLが去った新フォーマットによる新リーグが成立した。同時に作られたライセンス制度は、プロリーグの立ち位置を明確にし、団体側がより分かりやすく、かつ運営をしやすくするためのものだった。だがこの一年、ライセンス制度はその本来の目的に背いている”ように見える”こともあり、北米リーグを去った3つの大きな団体をめぐって混乱を引き起こしてきた。

以下、ライセンス制度がどのように機能し、eUnitedのロースターがなぜ北米リーグの出場資格を失ったのかについて詳しく見ていこう。

目次:

ライセンスのしくみ

大前提として、新しいエコシステムに参与しているすべての団体は、Ubisoftから運営ライセンスを受け取っている。このライセンスにより、各団体は以下のことが可能になる。

  • チームが出場可能な、(NAリーグ、EUリーグなど)リージョン内のあらゆる競技大会への出場
  • 世界規模の競技大会への出場
  • ライセンスを有するチーム間での選手移籍
  • 賞金の獲得
  • 他の団体へのライセンスの売却または譲渡

つまり、もし北米リーグのライセンスを持っていないのであれば、そのチームは予選や入れ替え戦の結果に関わらず、北米リーグで試合を行う資格はないことになる。

ではライセンスは誰に与えられるのだろうか。

レインボーシックス・サーキットで競技を行うすべてのチームは、ライセンスを持つには(協会や企業といった)法人を代表していなければならない。

したがって、ロースターは団体に所属していなければリーグ・ライセンスを持つことはできず、追い出されることになる。

実際これらライセンスに関わるルールは、団体がチームのすべてを支配していることを意味する。団体側が必要な選手を入れ替え、選手たちを十分にサポートできる限り、交渉の席も団体側が主導する。この構造は明らかに、著名な団体にシージeスポーツへの投資をすすめ、最上位層のチームをサポートしてもらうためのものだ。

団体が変わるときは、旧団体はロースターと一緒にライセンスも新団体に売却することになる。ここで問題となるのが、ライセンスを売らずに団体が去ってしまうケースだ。ライセンスはUbisoftに返却されるのだが、2020年はこの点が問題を引き起こした。

ECとLG、sQとDGに与えた影響

今年の4月に、Luminosity Gaming とEvil Geniusesは新団体にライセンスを売却しないままシージ界を去ってしまった。交渉の決裂など、舞台裏ではさまざまなことが起きていたと思われる。引き継ぐ団体がおらず、団体を失った選手たちはライセンスを保持できないので、この場合ライセンスはUbisoftに返却された。

同時期、Ubisoftはリーグの規模を10チームにしようと試みていたこともあり、同社は2つ分のライセンスだけを、(オフラインのリーグ戦として計画していた)北米リーグへの投資を望む団体にオファーしていた。その団体というのがSusquehanna SoniqsとDisrupt Gamingだ。ライセンスを手に入れたこの2団体は欲しいチームを思うさま獲得できるようになったので、Soniqsはチャレンジャーリーグから選手を引き抜き、Disruptは完全な新チームを作っていった。

ここで大きな問題が生じた。上述したルールのせいで、EGとLGの選手たちには出場権を保持する方法がなかったのだ。さらに、選手たちは団体から放出されると無所属状態となってしまうため、ライセンスを手に自分たちを売り込むこともできない。所属団体がないため、北米リーグは彼らをサポートできず、彼らもライセンスを保持できず、結局は居場所をなくしてしまった。

なぜRec/OxGは特例措置を受けられたのか

LGとEGが去った1ヵ月後、Team Reciprocityが財政面の逼迫を理由にチームを放出すると報じた。しかし今回はEGやLGのときとは異なり、選手たちは北米リーグへの出場資格を維持したまま、新しい団体へ移籍を果たすことができた。

なぜUbisoftはReciprocityのロースターに特例的な措置を講じたのか、なぜEGやLGには行わなかったのかと、多くの人々が疑問に思った。その理由は、EGやLGのときとは異なり、Reciprocityは実はロースターと一緒にライセンスを売却できていたからだった。

Oxygen Esportsの共同創業者であるMurph Vanderveldeは、SiegeGGと5月に行ったインタビューの中でこう述べている(そしてUbisoftのワールドクラスのマネジメント能力を称えている)。

Oxygen Esportsは、Helix eSportsという国内きってのeスポーツおよびVR施設のプロバイダーや、Team Genjiというeスポーツ分析におけるリーダー的存在と戦略的に合併し、さらにはTeam Reciprocityからプロのロースターを獲得したことで、今や絶頂期にあります。

「Team Reciprocityからプロのロースターを獲得」という部分は、シージとロケットリーグのチームを指している。いずれもReciprocityが北米リーグでのライセンスと一緒に売却した。そしてこれこそが、ライセンスがUbisoftに返却されないように、チームが安全に組織を離れることができるようにと本来意図された形だった。Chad Larssonが買い手を見つけてくれたことによってこのチームは救われたのだ。

eUには何が起きたのか

つい先日、eUnitedは次の試合が行われるまでチームが5ヵ月も待機するのは望ましくないとして、シージ界からの離脱を報じた。元々彼らはライセンスを引き継ぐ買い手を探しているように見受けられたものの、ついにそれは果たせず、行く当てがないことがロースターに伝えられたのは発表の数日前のことだった。

選手からすれば、これは完全にLGとEGの件の再現だった。今回はeUnitedがライセンスを売却できないままロースターを放出し、Ubisoftに返却。すなわち選手たちには北米リーグでのライセンスがないことを意味し、彼らは試合をする資格も失った。

ここで一点付け加えておくと、suprが(ライセンスはeUnitedの団体の方にあり、競技シーンを去ってしまったら選手たちは移籍も不可能になってしまう、といったことを)ツイートしたとき、eUnitedのコーチMatthew "meepeY" Sharplesは(舞台裏で起きていることがあるので、suprのツイートは正しくないと)否定したものの、6日後それが現実のものとなってしまった。

このときのやりとりは、eUnitedがライセンスの売却先を探すのを止めてそのまま競技シーンを去ることにし、結果今回の問題が生じたのか、それともUbisoftが先週のうちにルール改訂を行ったのか、いずれかを示唆していた。ともあれsuprは前者であると確信があったようだ。

eUnitedはロースターとライセンスの買い手を見つけられなかった。そう見る向きが強いだろう。なぜなら想定される買い手もまた、eUnitedと同じような計算をするからだ。チームがほんの一試合を行うまでに、5ヵ月分の給与を支払いながら、ベガスのチームハウスを維持し続ける理由があるだろうか?

北米リーグへの投資に関心のある団体はどこも、イヤー6の開始が迫るそのときを待っているのだろう。R6 SHAREプログラムがあるとはいえ、eUnitedの離脱を目にすれば、このタイミングでの投資は新たな買い手たちにとって悪い取引にしかならないからだ。

入れ替え戦はどうなるのか

通常の状況であれば、入れ替え戦は2チームによるリーグライセンスをかけた戦いとなる。たとえばヨーロッパでは、MnMかCowanaが入れ替え戦でRogueと対決するだろう。そして勝った方が、Rogueの持っている2021年シーズンEUリーグのライセンスを獲得する。たとえばMnMが勝った場合は、MnMがライセンスを新しい団体に売るか、自分たちのために持っておくかを選択できる。

北米では元eUnitedが北米リーグでのライセンスを喪失したので、RentFreeと元eUnitedの試合が行われても、それはライセンスとは関係がなく、どちらもライセンスを獲得できない。8つ目のライセンスは現在Ubisoftが持っており、(EGとLGのときと同様に)代わりの団体を決めるのもUbisoftだ。

RentFreeにとって、これはまったく良いニュースではないだろう。まだ北米リーグへの入れ替え戦で勝っていないこともあるが、eUnitedのニュースが報じられた際にUbisoftが次のように述べていたからだ。

チャレンジャーリーグに出場したチームRentFreeとともに、北米ディビジョンへ進出するための要件に関するやりとりを行っているところです。

つまり入れ替え戦で勝利しても、RentFreeはライセンスを獲得できない。それだけではなく、ロースターが北米リーグに参加するには、彼らを獲得してくれる団体にUbisoftが8つ目のライセンスを与えてくれるかどうかにかかっている。昨シーズンも、CLシーズン11はPogChampが優勝したものの、Disruptは北米リーグに向けてまったく異なるラインナップを揃えた。RentFreeのメンバーがばらばらにされないようにするには、自分たちをどこかの団体に売り込む必要があるだろう。

(訳注:以下は競技シーンのキャスターGeoのツイート。「この『要件に関するやりとり』については誰も知りません。UbiはRFの入れ替え戦に関する解決案を模索しているのかもしれません。RFが北米リーグへの参加資格を与えられるという確かな証拠がこれまであったでしょうか?」)

次は何が起きるのか

同じことが繰り返されるのなら、Ubisoftは新しい団体を見つけ、北米リーグのライセンスを与え、その団体は必要なラインナップをピックするのだろう。つまり半年前にDisrupt Gamingが入ってきたときとまったく同じ展開が予想される。

これはまったく不公平だ。再発を防止する唯一の方法は、フォーマットの改訂ではなく、ライセンス制度そのものを変えることにある。新団体に欲しいチームを何でもピックさせるのではなく、元ティア1のラインナップが優先的にピックされるようにするといったシンプルなものでも良いし、Ubisoftにライセンスが返却される前に、無所属チームに猶予期間を与えてもいい。

しかしそれでも一つの疑問が残る。もしコミュニティの大多数が現状を不公平とみなしており、シージコミュニティの内外からUbisoftに対する強固な反発が起き、かつ他のタイトルの団体からもこれを巨大な危険信号と捉えられてしまうのなら、Ubisoftはなぜこんなルールを制定したのだろう。

Ubisoftは団体とともに、団体は選手とともに

(以降の内容には、過去数年にわたるUbisoftの決断を元に、なぜそもそもUbisoftは上述した数々の決断を行ってきたのかについて、SiegeGGによる憶測が多分に含まれています)

シージの選手たちに生じる問題の中心にあるのは、Ubisoftの決断が団体とカジュアルなファン層の要望に沿って行われており、プロ選手たちは後回しにされていることだ。時折、重要な情報をいちばん最後に知るのがそのチームの選手たち、ということがある(先週のeUのロースターのように)。またライセンス制度のおかげで、団体側は交渉に際して選手たちを完全に支配できるし、新しい団体は(sQとDGのように)既存のロースターに関係なく大きな舞台への参加資格を受け取れる。

なぜか。Ubisoftが第一に考えているのは団体側を満足させることであり、選手たちではないからだ。

Ubisoftからすれば、毎年シージにより多くの選手が入って来ればそれだけ収益も上がっていく。eスポーツのエコシステムを存続させるためには、生涯をシージに捧げてくれる選手がいないことは問題ではなく、選手たちをサポートしてくれる団体がいなくなることの方が問題なのだ。よって団体側が優先される。

北米リーグへの投資を望まない団体は既にリーグを見限り、チーム数は10から8になっている。これはUbisoftの計画にとって大損害だ。一連の決断がすべて団体側にのみ都合がよく、Ubisoftが選手の救済に乗り気ではない点もこれで説明がつく。彼らはリーグの救済に躍起になっているのだ。

Ubisoftにしてみれば、団体側を優先すれば、40ものプロフェッショナルな企業とともに仕事ができる。そうすることで、200人の若い選手たちではなく、主要な4つのリージョンを満足させられる。選手たちはおよそ現実的ではないタスクを背負わされ、絶え間ないロースター変更とスタッフの入れ替えを避けることもできない。

現状のままでは、Ubisoftは明日にでも100人のプロ選手をまとめて競技シーンから失う可能性があるものの、団体側がいてくれる限りシージeスポーツは続いていく。逆にHaloのような他のタイトルで起きたように、企業側の離脱が相次げばそれは不可能になる。

Chaos、Secret、EG、NiPの代表者たち。Ubisoftとのミーティングにて

では誰が選手のことを気にかけてくれるのかと言えば、団体側だろう。R6 SHAREプログラムに留まり、ライセンスを維持するには、どんな団体も現地のオフラインリーグにおいて、選手たちに最高レベルの給与とサポートを提供しなければならない。

文面を読んだ限りでは、現在の仕組みは4つのグループ(Ubi、団体、プロ、観戦者)すべてに相互利益があり、競技シーンに持続性を与えている。しかしLGやEG、eUが他の団体と入れ替わらずに離脱した際に見られたように、このうちどれか1つのグループでも早々に去ってしまう場合に問題が表面化する。Ubisoftがライセンスを持ってしまうと、Ubisoftの仕事は団体側を満足させ続けることであるため、選手側の要望とは相容れなくなってしまう。

Ubisoftにとってはハイクオリティな選手は代用が効くが、物持ちな団体は稀で、貴重なものだ。これはUbisoftが強欲で怠惰なのではなく、企業としての自己保存本能のあらわれと言える。

選手たちがUbisoftに意味のある行動をさせられない理由は、基本的にはこの点にある。ストライキや試合のボイコットなど、選手やファンたちが提案しているような行動は、問題点をいたずらに悪化させてしまう可能性が非常に高い。その不安定ぶりを見てシージに投資してくれる団体が減少し、既に参加している団体も年間の試合数やトーナメントに出場する機会が減ってしまうため、さらに多くの団体が競技シーンから去ってしまう。

「選手会」はアイデアとしては良い方だ。しかし団体側と給与の交渉で協力するときは効果的ではあるものの、選手会では前述したストライキ以上に、Ubisoft側から意味のある反応を引き出すのは難しいだろう。

最後になるが、Ubisoftと団体側から何かを変えていくきっかけを作らなければ、選手たちが所属団体とライセンスを失うリスクは今後も続くだろう。この問題を修正するには、そもそも団体が離脱してしまう理由をUbisoftが修正できるかどうかにある。つまり試合数のあまりの少なさに対して、コストがあまりに高すぎるという点だ。

競技シーンに関わる4つのグループはすべて、より多くの試合、より多くの視聴者、そして(R6 SHAREなどのプログラムを介して)トーナメントのさらなる収益化を求めるべきだ。

願わくば、この問題点の修正に向けてUbisoftが団体側とともに取り組み、現在のフォーマットを4つのリージョンすべてにわたって最適化させていって欲しい。合わせて2021年にオフライン大会が戻ってくるのなら、シージ界から去る団体も減り、ビジネス上の判断に巻き込まれてしまう選手も減っていくだろう。

パンデミックの渦中にフォーマットの枢軸を変更したこともあり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は『レインボーシックス シージ』にとっても大きな嵐となった。しかしコロナ禍が去るにつれ、空も再び晴れ渡っていくはずだ。

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