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レインボーシックス・イヤー1:ワイルド・ワイルド・ウエスト

「Competitions」ページの実装に合わせて、シージ競技シーン1年目の出来事をストーリーやデータとともに見ていこう

SiegeGGが始まったのは2017年11月のこと。世界中のボランティアたちが、自分たちのよく知る、そして愛して止まないこのゲームに最高級のeスポーツ報道をもたらそうという1つの目標の下に集まった。最初に取材した大会はシックス・インビテーショナル2018だった。そこから徐々に大きくなり、スタッフの規模も拡大していくにつれて、より大きな、これだけのものを望む者など他にいないというほどのプロジェクトにも着手できるようになった。

SiegeGGの設立以前は、共有が可能で一貫性のある統計データがなかった。そして私たちにもその空白を埋める力がなかったので、その頃の試合データは全体像から欠落していた 。これまでは。

規模の拡大と、統計スタッフや開発スタッフの不断の努力もあって、SiegeGGはこの度めでたく「Competitions」ページを開設するに至った。ここではESLプロリーグにおけるイヤー1やイヤー2の歴史あるデータをも網羅しており、他にも今日までのあらゆる大会のレーティング情報を最新版の計算方式によってはじき出している。

このページの開設を記念して、ストーリーやデータを交えながら、シージの競技シーンにおける各シーズンの勝者について深く掘り下げていこうと思う。まずはイヤー1、「ワイルド・ワイルド・ウエスト」をお届けする。

目次:

シーズン1

ヨーロッパ

プロリーグが最初に行われたのはヨーロッパ。2016年3月4日、ポーランドのカトヴィツェにあるかの有名なスポデク・アリーナでのことだった。そのときはフィンランドチームGiFu eSportsが、スペインチームgBotsの選手たちを前に0-2で膝を折っていた。当時のプレイヤーであり現在はアナリストを務めるAlex "z1ronic" Dalgaard-Hansenによれば、出場チームの大半は勇猛さだけがウリのランクマ勢5人組だったそうだ。

その当時は作戦と呼べるものがほとんどなかった。各チームに独自のスタイルがあり、たとえばgBotsは防衛時にたびたびショットガンを4丁持ち込んでいたし、GiFuはNiklas "Willkey" OjalainenがGlaz使いとしてよく知られていた。そしてdat fLAM3RSとPENTA Sportsは「盾新兵」の猛者だった。「今日では大半のチームがそのときどきの最強戦法を真似るだけで、自分たちの能力を最もうまく引き出せるようなプレイに磨きをかけようとしない」とz1ronicは嘆く。発展の仕方としては度し難いのだろう。しかしシージのプレイスタイルがそうした画一化の一途をたどってきたのも事実だ。

当時は各チームが各ボム位置について3つか4つの作戦を持っていた程度で、美しい遊撃術や遊撃潰しの策についてはまるで知られていなかった。しかし統計に目を向けると、この頃から既にチームの序列が、ひいては選手間の序列が確立されていたことが分かる。

Bounssi。シックス・インビテーショナル2018から1年以上過ぎた頃の写真 (Photo: ENCE)

Jouni "Bounssi" Saloは明らかに、この頃から既にヨーロッパで最も優れたSmoke使いだった。z1ronicによれば世界有数ですらあり、彼のチームがプロリーグ・シーズン6における最初で最後の勝利を飾るまで、彼はその地位に居座り続けていた。結果だけ見ると、彼はオンライン・オフライン混成で行われた最初のシーズンを1.48という、どう控え目に見ても最高でしかないレーティングでしめくくっていた。当時のチャンピオンであるRainer "S4i" Kneidl、Niclas "Pengu" Mouritzen、Daniel "chOi" Ortega Martínez、そしてz1ronicらは彼よりやや後ろについていた。

これらの選手たちのうち、G2 EsportsのPenguだけが今日に至るまで変わらぬパフォーマンスを発揮し続けている。(z1ronicを含めた)多くの選手が、それこそ彼が史上最高のレインボーシックス・プレイヤーである証拠として称えている。

PENTAの他の選手たちも同様にチャートの上位についていた。Iván "KRYP" Cuesta Méndezはキルデス差でリーグ第5位、Martin "rendier" Friedrichのエントリーフラッギングは第3位で、上位2名はチームメイトであるPenguとS4iだった。そしてMichiel "oVie" van Dartelもディフューザー設置に成功した回数で同率3位についている。

ヨーロッパ・シーズン1における各項目トップ5選手

総じて作戦とは無縁だったにも関わらず、GiFuとPENTAはマップ内の重要ポイントを交換しながら試合をコントロールしていくという現在にも通じる哲学、その原型を既に確立させていた。

北米

北米の方では、ヨーロッパと同じような部分もいくらか見られたが、他は大きく異なっていた。シージとはリスポーンがないまったく新しいFPSゲームで、理論的かつ戦術重視。そのユニークなゲーム体験に、Michael "KiXSTAr" StockleyやTroy "Canadian" Jaroslawskiといった多くのプレイヤーが魅了されていたのはヨーロッパと同じだった。

また、北米でも最初期からチーム間に序列があり、Team OrbitやKingdom eSports(それとチートを使って「引退」となったPhilip "Clever" LoughのVwS Gaming)がトップ集団を形成していた。しかしこの時点ではまだ、選手間にははっきりとした序列はついていなかった。チームは選手個々人の関係性によってその型が作られており、プロリーグに入るために求められていたのは、ひとえに機械的に戦えるスキルを標準装備しているか否かだった。

KiXSTArによれば、22マップ分は配信動画が残っていないため、統計は完璧に正確であるとは言えない。しかし彼に言わせれば、当時のシーズンで体験したものは統計が示すような数字以上のものだったそうだ。シーズン2のときにチームメイトだったCanadianもそのときの気持ちを共有している。プロeスポーツ界全体の動き、特にシージの競技シーン草創期の出来事の中では、試合というものは全体における約5パーセントに過ぎず、内々でのスクリムが残りの大部分を占めていたそうだ。

レーティングを見た限りでは、Team OrbitのOzgur "Kanine" Alturkが1.34と、2位のプレイヤーとは0.07ポイント差で当時の環境をリードしていた。とはいえ最近までEvil GeniusesでプレイしていたAmmar "Necrox" Albannaも、全体4位、キルデス差で首位、エントリーフラッギングでは同率2位と、多くの項目で目立っていた。

北米・シーズン1における各項目トップ5選手

今日に至るまでプロとして活動している他の有名どころでは、当時のVelocity Esportsの選手であり現在のDarkZero EsportsのコーチであるBrandon "BC" Carrと、Owen "Pojoman" Mituraがいた。前者はエントリーフラッギング成功率でリーグトップだっただけでなく、クラッチ数も最大、KOST(※訳注:キル数、目標遂行数、生存率、キルトレード数を合わせた全体的なチームへの貢献度の指標)も同率3位だった。

とはいえKiXSTArによると、Orbitのベストゲームの大半は配信動画が残っていないため、これらトップ5の他の項目にはチームメイトの名前が出ていないそうだ。たとえばDave "Kuush" Brunelleは1対多の状況でクラッチを決めたのが1回になっているが、実際にはシーズン最多で1位だったとか。彼が言うにはTeam Orbitの試合は大抵配信されず、配信されない時ほどKanineが持てる力のすべてを引き出してチームの劣勢を食い止めてくれたという。

彼らトップ選手たちとは対照的な、面白いデータも見つかっている。今日の北米リージョンにおけるベストプレイヤーの一人であるDarkZero EsportsのMatthew "Hotancold" Stevensは、Got em Gamingでプレイしたこの草創期には大苦戦しており、シーズン1の最終レーティングは0.78だった。

最後にマップを見てみると、北米のチームは覚えるのが簡単という理由で「民家」のような小さなマップや盾を使うのを好んでいたようで、「銀行」や「領事館」といった複雑なマップは避けていた。KiXSTArによれば作戦も非常に少なく、選手たちの行動についてキャスター陣が論理的に説明をしようとするのを、どのチームも面白がって聞いていたそうだ。

ファイナル

PENTA Sportsはプロリーグ・シーズン1でタイトルを獲得した (Photo: ESL)

しかし事態は史上初のプロリーグ・ファイナルの訪れとともに激変していった。ヨーロッパ勢のきっちりと組まれたプレイスタイルの前に、北米チームはまるで為す術が無かったのだ。なかでもVwS Gamingは、謎の引退を遂げたCleverの代わりにKyle "Mint" Landerを入れて試合をせざるを得ず、さんざんな結果に終わった。

PENTA SportsはVwS GamingとGiFu eSportsをともに4時間のうちに2-0で倒して優勝と相成った。KiXSTArが当時を振り返って言うには、最終成績2位となるGiFuには完全に試合をコントロールされてしまい、格が違っていたそうだ。このときのファイナルは北米チームに多くの教訓を残した。

シーズン1ファイナルにおける各項目トップ5選手

今さら言っても誰も驚かないだろうが、大会MVP選手となったPenguは1.47という圧倒的なレーティングだった。その主な内訳を見てみると、キルデス差が+18で、KOSTが79%だった。チームメイトのoVieも1.23と、レーティング面ではやや差が開いた形でEVPs(極めて優秀な選手たち)2名のうち1人に選ばれた。片やGiFuのWillkeyはこのときレーティング1.07、「その他」の扱いだった。

かくして、まずはヨーロッパ勢がリードを獲得した。

シーズン2

ヨーロッパ

今日よく知られているPenguの業績を踏まえると、シーズン2とそれ以降でもPENTA Sportsが環境を支配し続けていたものと思いがちかもしれない。しかしz1ronicの言葉を借りれば、シーズン2は「Yunktisのシーズン」だった。

故郷に栄冠を持ち帰ったものの、ヨーロッパ・リージョンの各チームは、新シーズンではシージに対してもっと真剣にならねばと感じていた。そうして反省をし、よりハードな練習を続けたチームの中から、Yunktisがまず一歩前に出ていった。このフランスチームが他に差をつけられたのは、Valkyrieのような情報系オペレーターの使い方についてより深く理解していたおかげだった。ブラックアイの設置場所について、建物の中よりも外に投げる手法に先鞭をつけたのも彼らだ。

Yunktis在籍時のSixquatre。シーズン2ファイナルにて (Photo: ESL)

その評判の大部分は、現在はキャスターをしているBenjamin "Sixquatre" Lerayの存在にあった。Yunktisは軍隊式の規律と効率の追求をチームにもたらしたことでこのゲームを激変させた。z1ronicが言うには、このときの衝撃は最近でいうTeam Empireの登場と同じようなものだったとか。Canadianもまた、自分を含めてほとんどのIGL(試合中のリーダー役を務める選手)はチームを率いれるようになるまでに多くのことを学ぶが、Sixquatre以上に学べる人物はいないと述べている。

ValkyrieとPulseを使った作戦は流行したが、攻撃におけるIQの価値はまだ理解されていなかった。ハードブリーチャーコンビであるThatcherとThermiteの必要性。Sledgeのようなソフトブリーチャー。そしてAshや、当時出たばかりのBlackbeardのような全きパワーの持ち主の方が求められていたのがその理由の大半を占める。結果的に、大抵のプレイヤーはAshを使ってプッシュに専念したり、Blackbeardでロックしたりと、これら2人のオペレーターを使ってキル稼ぎをするのが主流になっていた。

ヨーロッパ・シーズン2における各項目トップ5選手

PENTAの選手たちが各項目を総なめしていることを驚く者もいるだろう。ただし統計は嘘をつけないので、oVieの1.79というレーテイングについては彼が17ラウンドしか出場していない点を加味する必要がある。次点の高レート選手はYunktisのOlivier "Renshiro" Vandrouxだった。Penguは予想通りそのすぐ後ろについている。レーティングで実質2位。キルデス差とKOSTでは全体2位だった。

PENTAの選手たちは各項目のトップ5に入っているが、シーズン1におけるチャンピオンチームは、2位のGiFuと3ポイント差で全体4位に終わっている。フィンランドチームGiFuは驚いたことにエントリーフラッギングのカテゴリーをほぼ独占しているのみだった。もっとも遊撃の名手Riku "Keittiömestari" Pöytäkiviはクラッチを3回決めており、Mikko "ProtaX" Mutanenもディフューザー設置を9回成功させてはいる。

北米

北米では、Team OrbitがGiFu戦での敗北から学んだことを出力する準備を整えていた。チーム間の序列はさらにはっきりとしたものになり、ヨーロッパ式のプレイスタイルを北米流と融合させたTeam Orbitが北米リージョンを席巻した。

Team Orbit在籍時のKiXSTAr。シーズン2ファイナルにて (Photo: Sammy Lam, ESL)

Team Orbitの後方には、True AmibitionとTrinity eSportsが一定の距離を保ちつつ続いていた。特にOrbitとTrinityはマップ選択の幅を広げるべく努め、すべてのマップでスクリムをして可能な限りの準備をしていた。ゆっくりと、しかし着実に各マップにおける競技性は高くなり、「運河」や「山荘」、「クラブハウス」、「銀行」でもより多くプレイされるようになった。しかしそれでも「ヘレフォード基地」は8回しかプレイされなかった。その構造が競技向けでないとはっきりしてくるのはシーズン3でのことだ。

北米のシーズン2では「領事館」と「オレゴン」もほとんどプレイされなかった。これらのマップでうまく立ち回るには、各チームとも異なるプレイスタイルや、このゲームへのさらに深い理解が必要だったと思われる。これらの習得に時間がかかった理由は、そもそもがシンプルなプレイスタイルだったこともあり、当時の競技シーンには作戦立案もこなせる選手が片手で数えられるほどしかいなかったせいだろう。今日では、Spacestation Gamingという最強チームに所属するCanadianも主張しているように、全員が作戦立案をこなせなければならない。

北米・シーズン2における項目別トップ5選手

ヨーロッパのoVieと同様、Dylan "Gib2k" Gibbsは12ラウンドしか出場していないので、Ace GamingのLegendのレーテイング1.25の方にこそ意義を見出したい。OrbitのコンビであるSteven "Snake_Nade" WhiteとKiXSTArはそのすぐ後ろについている。George "KingGeorge" Kassaのレーティングも彼らに連なっていた。とはいえ各項目を見れば、このシーズンのOrbitがどれだけ環境を支配していたかがよく分かる。所属選手一人ひとりが各項目のトップ5に入っているのだ。

Trinityも上々だった。MintとPojomanが合わせて5クラッチと活躍し、他にもKingGeorgeがキルデス差で強烈な数値を残している。Joey "Xclusive" Buzzeoのディフューザー設置回数はリーグトップの10回だった。しかし彼らをもってしても、8ポイント差をつけていたOrbitがただひたすらに強かったことがわかる。

ファイナル

Sixquatreや、Vincent "Falko" Baucinoという強烈な個性を持った選手たちを擁するYunktisは、シーズン2ファイナルで優勝するまで誰にも止められなかった。z1ronicによると、試合中にどんな障害があろうとこのコンビは決して止まらなかったという。

前シーズンでGiFuから学びを得たTeam Orbitは、このフィンランドチームを倒して逆襲に成功した。だがCanadianとKiXSTArが口をそろえて言うには、Orbitの選手たちはYunktisに対して準備の手立てがなかったそうだ。Trinityのロースターを獲得したFlipSid3 TacticsはYunktisを追い詰め、第1マップではオーバータイムに持ち込みあと少しで勝てそうだったが、第2マップは5-3、2-0で封じられていた。

グランドファイナルについてはCanadianがこう語ってくれた。Yunktisには常に作戦があり、Orbitはそうしたやり方に適応する力が欠けていた。この戦術面の差によって、フランスチームはあらゆる局面で北米チームよりも一歩先へと進み続けていた。

シーズン2ファイナルにおける各項目トップ5選手

1.11というレーティングでEVPに選ばれたCanadianの果敢な試みも実らず、BlackbeardとValkyrieを駆使してレーティング1.27をつけたRenshiroがこのときの大会MVPに選ばれた。BuckとPulseを使ってEVPとなったFalkoはレーテイングで1.16。Yunktisは他のチームに差をつけ、初のプロリーグタイトルを獲得した。

シーズン3

ヨーロッパ

シーズン3では、ヨーロッパの競技シーンがかつてないほどヒートアップした。z1ronicによれば、この頃から誰しもシージに「本気」になり、今日でも見られるような現代的メタがはっきりと形作られていったという。

シーズン2を制覇したのはYunktisだったが、途中で倒れていったどのチームもより時間をかけて、それぞれの鎧に空けられた穴を埋めていった。フランスのチャンピオンチームは内々で不和が起き始めていたこともあり、他のチームは彼らからプロリーグファイナルの出場権を奪うチャンスをうかがっていた。

シーズン3でのPlaying Ducksのロースター。左からmeepeY、ENEMY、Panix、z1ronic、Elemzje

そうしたチームの一つ、Playing Ducksは特にプレイのクオリティを上げるべく努めていた。z1ronicとKonstantin "cHaOZ_ZoNE" Marahrensを残して以前のチームから一新。František "A1GA" KotačkaはPENTAに放出した。こうしてチームは徐々にオフライン戦にも出場できるだけのチームへと変化していった。

Playing Ducksのロースターを抜けたVille "SHA77E" Palolaは、元々警察学校に入るつもりでいた。チームとしては間違いなく強力な選手を失ったわけだが、結局SHA77Eは当初の予定を延期にしたようで、GiFu eSportsに居場所を見つけて自らの新しい側面を開花させていった。彼が別のチームに入ったことで、後に今日まで残るプロリーグの名勝負の数々が生まれることになる。

統計を見た限りだと、すべての項目でさまざまな選手たちが顔を出している。Willkeyは全体レート1.37でトップ。キルデス差ではYunktisのRenshiroとPENTAのJoonas "jNSzki" Savolainenに1キル差で3位だった。それとは別にMattias Johannes "Renuilz" Nordebäckも名を挙げている。全体レートで第4位、キルデス差で4位、KOSTで3位だった。

このシーズンのGiFuは、他のどのチームにとっても倒すべき敵であった。しかし他のどのヨーロッパチームも、このフィンランドチームの3勝4分の成績には及ばず、むしろ2位以下は地獄絵図と化していた。最終節では4試合すべてが引き分けとなり、Playing Ducks、PENTA Sports、Yunktisが3勝3分1敗の12ポイントで並んでしまう。しかもこのうち2チーム、Playing DucksとPENTA Sportsはラウンドの勝敗差まで同じだった。だが結局はPlaying Ducksの方が合計対戦ラウンド数で6ラウンド多かった。

ヨーロッパ・シーズン3における各項目トップ5選手

最終節の日の午後になって、z1ronicと彼のチームメイトたちはようやく確認を得ることができた。オフライン大会に出場できるのだ。Playing Ducksの選手成績も各項目のトッププレイヤーとして名を連ねていた。Dimitri "Panix" de LongeauxはKOSTで同率3位。1位と2位はチームメイトのMatthew "meepeY" SharplesとJulian "ENEMY" Blinだった。彼はクラッチ数でも同率2位となっている。さらにこのときmeepeYは設置回数10回でリーグ首位、Playing Ducksにとっての頼れる中核選手となっていた。

北米

その頃、北米では変化の風が吹き荒れていた。前シーズンもタイトルを逃したことで、Canadianは自分のチームを、後にシージの歴史書に残るであろうチームを結成しようと決意する。彼は一緒にプレイしていてベストが引き出せる選手たちを、それでいて個々に確かな力量のある選手たちを選り抜いた。Biggity Boo Bop。後のContinuumの誕生である。

シーズン3でのContinuumのロースター。左から、Necrox、Retro、Canadian、nvK、Yung

Nathan "nvK" Valenti、Alexander "Retro" Lloyd、NecroxそしてYung。こうした面々から成るContinuumは順調に前進していった。Canadianは、現在のチームコーチであるJustin "Lycan" Woodsが当時同じ強さのチームを作ったとしても、こんな感じになったろうと述べている。

ヨーロッパと同様、この頃から早くもいくつかのチームが、今のシージにも通じるものを垣間見せていた。またYunktis流のチーム規律もすべての北米チームによって共有されていた。それでいながら、後れを取り戻さなければという使命感にリージョン全体が燃えていた。

練習を重ねるにつれ、北米では各チームが「クラブハウス」や「山荘」、「国境」などマッププールにより多くの得意なピックを持てるようになり、リスクを冒しながらも競技における優位性を獲得していった。補足すると、少なくとも北米では当時の「クラブハウス」は圧倒的攻撃有利マップで、63ラウンドのうち防衛側の勝率はほんの38%だった。これについてCanadianが言うには、このマップでのBlackbeardの強さや、ThatcherのEMPグレネードの範囲の広さが原因だったそうだ。(※訳注:リリース当時のEMPグレネードの効果範囲は半径7メートルだった。2016年5月10日付のUpdate3.0で半径5.2メートルにナーフされている。Blackbeardのライフルシールドは実装当時HP800だった。2016年9月13日付のUpdate4.2以降、このガジェットには調整が施されていった)

ヨーロッパ・シーズン3における各項目トップ5選手

リーダーボードを見た限り、このときは明らかにContinuumのシーズンだった。選手一人ひとりが最低でも1つの項目内でトップ5に入っており、中でもCanadianは全体レーティングで1.28、キルデス差で+32とそれぞれトップ。エントリーフラッギング成功数も+5で同率3位だった。とはいえレーティングに関して言うなら、KingGeorgeやPojomanもさして大差はつけられていない。両者はともにキルデス差やエントリー成功数でも素場らしい記録を残している。

他にも、OrglessGGの選手であるSpencer "Slashug" OliverとSnake_Nadeのエントリー数も堅実なものだった。またSlashugのディフューザー設置は9回とリーグ最高数であり、KOSTも72%だった。もっともこのときのKOSTでは、Retroが84%というとんでもない高さを記録していた。

特に興味深い点について触れておくと、実は各項目のトップ5の選手たちのうち、6人を除いて全員がシーズン11時点でもプロとして活動している。Snake_NadeとKingGeorgeは現在ではシージのストリーマーに専念しており、Marcus "Talon" Lynnは直近ではシーズン10チャレンジャーリーグに出場。John "Avian" Ackerlyもプロリーグシーズン10に出場していた。

ファイナル

このときのファイナルは、z1ronicとCanadianにとって後のキャリアを決定づける2日間となった。レインボーシックスがeスポーツとして成長し始めたのもこのときだった。プロリーグの歴史において、今日に至るまでもっとも面白かったとされる名勝負の1つが見られたのもこの大会だ。

Playing Ducksとしては、元より準決勝でMost Wanted (元OrglessGG)と「運河」で戦うつもりはなかった。ヨーロッパ勢は苦手マップであるこの「運河」を第3マップに回したことで、オッズはPlaying Ducksに傾いた。PanixやmeepeYの活躍もあり、Most Wantedはオーバータイム最終ラウンドで敗退。北米に初のタイトルを持ち帰れるかどうかはContinuumの双肩にかかっていた。

グランドファイナルは極めて拮抗した一戦となった。この試合が何度もオーバータイムにもつれこんだのは、ひとえにNecroxの大胆な決断と、彼の機械じみた正確無比なスキルの数々のおかげであるとKiXSTArは述べている。今回の北米勢はあっさり詰まされなかったどころか、見事な逆転勝利をおさめたのだ。

Playing Ducksは、各マップに置きドローンを活用する緊密な戦術を用いた最古のチームの1つで、元よりこれを心得ていたCanadianは、Necroxにも裏取りを狙うのはやめるよう指示していた。しかし敗勢が色濃くなるにつれ、Canadianもついに折れた。裏取り監視用のドローンがSmokeの動きを見逃してくれることをただ祈った。

Playing Ducksがボム部屋に突入する瞬間、カオスが巻き起こった。まずz1roicがチームメイトであるBryan "Elemzje" Tebessiにキルされてしまう。ディフューザー設置後、Elemzjeはサイト内にドローンを回そうとしたが、ドローンのうち1つは投げ込んだ際に破壊されてしまったので、彼は生命線であるキッチンの裏取りチェック用ドローンを動かしてしまう。Elemzjeがサイト内をドローンでチェックするというこのときの決断が、結果としてヨーロッパ勢に破滅をもたらす。

z1ronicは、ドローンが裏取りをチェックしてくれていることを願っていた。しかし事態を理解した彼の心にひびが入る。Necroxは裏取りを成功させ、Retroもわずかな選択肢の中から彼のカバーに成功。2対1の状況を作った。z1ronicや他のPlaying Ducksのメンバーは思わず頭を抱え、この瞬間、シージの試合における同時視聴者数が100,000人を突破した。

シーズン3ファイナルにおける各項目トップ5選手

統計も予想通りのものが現れた。レーティングとキルデス差ではともにnvKが首位、当然のようにMVPに選ばれていた。片やチーム2位のレーティングを出したYungもEVPを受賞した。Playing DucksのmeepeYもそれほど引き離されておらず、1.23というレーティングでEVPを受賞。その大部分は2試合で11回のディフューザー設置成功という功績によるものだろう。

シックス・インビテーショナル2017

ついにシックス・インビテーショナル2017がやってきた。記念すべき第1回大会だ。KiXSTArはこのときの大会で特に強く覚えていることがあるという。確実にContinuumが優勝すると分かっていた、ということだ。シーズン3での彼らのパフォーマンスをその目で見、その成長ぶりに注目していた者からすれば、北米勢を止めるのはほぼ無理だ。その点を彼とz1ronicはともによく理解していた。

Canadianは時間が経てば経つほどますます成長していった。物事を成し遂げられる選手に。よりうまく成し遂げられる選手に。そして誰にも劣らない選手となった。選手たちもそれぞれ互いに理解していたことだが、重要なのはこのゲームへの理解度を上げることであり、単純にスキルを高めていくことは徐々に重きを占めなくなっていった。

現在ではFaZe Clanとして知られる面々から成るSantos Dexterityも登場した。KiXSTArとCanadianは彼らについてこう綴っている。彼らは突如として存在感を増し、中でもLeonardo "Astro" Luisは強烈なパフォーマンスを発揮していた。この点は統計にも反映されており、Astroは全体レーティングで5位。キルデス差でも全体3位だった。

南米 (LATAM) とアジア太平洋 (APAC) にとってはこれが初となる世界大会だったので、彼らがどんなことをしてくるのかほとんど誰にも分からなかった。中には彼らがリスペクト精神に欠けていると見なした者もいたようだが、z1ronicとCanadian、そしてKiXSTArの全員が、彼らは単にリスペクト精神が求められるような場に臨む機会がこれまでなかっただけだという点で同意している。

Santos DexterityとTeam Envy (現Giants Gaming)はともに目覚ましい成果を残した。SantosはEuronics Gamingを倒す番狂わせを起こし、Continuumにも食らいついていた。Team Envyも、最終成績で準優勝となるeRa Eternityに対して1マップを取っている。

この2つのリージョンについてはこれまでほとんど知られていなかった。Canadianが言うには、EnvyのキャプテンGlen "Lunarmetal" Suryasaputraはシージのゲーム性を深く理解しており、練度の高い他のライバルチームと比べて、ブートキャンプの機会もなければ練習時間も限られているはずの彼らには驚きを隠せなかったそうだ。

Santos DexterityについてもCanadianは、強いチームだったと言っている。しかしEnvyと同様、やはり経験が浅かった。z1ronicも当時を振り返って、ヨーロッパ勢は戦術を開拓し、北米勢はそれを上回ろうと努めてきたが、LATAMとAPACはそれぞれ自分たちなりの戦い方を見せていたと語る。

GiFuのSHA77Eはシックス・インビテーショナルで大きく成長し、全体レーティングで第2位。悲惨な結果に終わったシーズン3ファイナルを遠い過去のものにした。とはいえ彼はここで満足していなかった。一方Team Envyのスター選手であるAdrian "Ysaera" Wuiも、競技シーンのないリージョンからやってきて全体レーティングで7位と上首尾に終わっている。そして全体の顔ぶれはContinuumが独占していた。

シックス・インビテーショナル2017における各項目トップ5選手

このときはCanadianが圧倒的ベストプレイヤーだった。全体レーティングでは1.32と首位。これは主に+20というキルデス差、+7のエントリーフラッギング成功数、75%のKOSTによるもので、やはり大会MVPに選ばれている。チームメイトのnvKも全体レーティング1.23でEVPだった。eRaのTyler "Ecl9pse" McMullinとKanineも、それぞれレーテイング1.06でEVPに選ばれている。

グランドファイナルは北米チーム同士の緊迫した大決戦となった。Canadianは、スキル面ではeRaもContinuumに比肩していたと回想する。しかしこの2チームはスクリム仲間だったこともあり、今だからこそ言えることではあるものの、彼としては敗北はまるで頭になかったそうだ。

第3マップのオーバータイム第2ラウンドでは、Snake_NadeとAvianが有刺鉄線に足をとられ、Continuumが初の世界チャンピオンとなった。彼らが優勝ケイバーを掲げるその姿を、多くのファンが目撃した。

次回予告

「Companion」シリーズの第2回が待ち遠しいという方に向けて、シージ競技シーンの2年目のことも詳細に記録されているCompetionページを改めて紹介しておこう。また、イヤー1の名場面など思うところがあればどんどんコメントしていって欲しい。

次回はシーズン4とシーズン5を通してPENTAの圧倒的な強さを追っていく一方で、シーズン5におけるElevateの物語や、最初で最後のプロリーグ王者となったENCE eSportsにも触れていく。ぜひ期待して待っていて欲しい。シージの競技シーンに関するあらゆる最新情報についても、SiegeGGのTwitterを引き続きチェックしておいてくれ。

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