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『レインボーシックス』ユーザー・リサーチ・プロジェクト・マネージャー、Julien Hugueninへのインタビュー

この「ミラノ・マッドネス」シリーズでは、来たるシーズン9ファイナルズに向けて、選手たちの考えていることや、舞台裏での出来事について取り上げていきます。今回は『レインボーシックス』のユーザー・リサーチ・プロジェクト・マネージャーである、Julien Huguenin氏をお迎えしました。

原文:Interview With Julien Huguenin: Rainbow Six User Research Project Manager

あらゆるデザイナーにとって重要なのは、自らのデザイン観をどれだけ上手くプレイヤーのゲーム体験に落とし込めたかというフィードバックを得ることであり、フィードバックによってゲームは常により良いものになっていく。たとえばメニュー画面をとってみても、プレイヤーはさまざまな部分に効率の良さを求めるものだ。しかしそれ自体はゲーム作りの第一目標ではない。

むしろ重要なのはチャレンジすることであり、チャレンジが楽しさへと繋がっていく。しかしそれが正しいチャレンジかどうかをデザイナー側が見定めるのは難しい。そこでユーザー・リサーチ・スタッフの出番となる。操作性やバランスについても同じことが言え、プレイヤーが楽しんでくれているかどうか、リサーチ・スタッフは試行錯誤を繰り返すことになる。

ゲームデザイナーとは往々にして誹謗中傷に晒されるものだ。『レインボーシックス シージ』に関してはまず間違いない。特に対戦モードを例に挙げると、たくさんのパーツが一塊になって動き回ればバグやバランスなどの問題が生じてしまう。とはいえ、ゲームデザイナーが効率良く仕事をこなしていくためには、批判意見は吟味されて然るべきで、建設的なものである必要がある。もっと言えば、どんなゲームデザイナーも、とどのつまりは人間であるということを覚えておいて欲しい。

SiegeGGはこうした人間の1人、『レインボーシックス シージ』のユーザー・リサーチ・プロジェクト・マネージャーであるJulien Huguenin氏にインタビューをし、彼の仕事やミラノでのファイナルズについて話をうかがった。

ではまず、あなたはどんな仕事に携わっているのか、詳しく説明していただけますか?

私は『レインボーシックス シージ』のユーザー・リサーチ・プロジェクト・マネージャーで、つまりはプレイヤーに対してリサーチをかける仕事です。認知科学やゲームデザインの知識を組み合わせながら、その成果を日々テストしています。私の専門はどちらかといえば定性的フィードバック、つまり数字には出てこない意見を収集することです。それとテストプレイヤーたちを(メリットもデメリットもありますが)開発スタジオに招いて、実装前のコンテンツのテストにも力を入れています。

全体から見れば、データ・サイエンティストとか、「ゲーム・インテリジェンス」と呼ばれているコミュニティの専門家による、もっと大きなチームの一部なんです。それから、私たちはプレイヤーから得られたフィードバックやデータを比較分析しながら、ソーシャル・メディアの動向も追いかけています。ユーザー・リサーチ・ラボのテストルームで見られたものも含めて、シージの新機能や既存の機能について、内々で疑問点を洗い出します。ゲームデザイナーたちと全員で仕事に取り組むことで、開発チームは確かなデータに基づいた決断ができるんです。

コミュニティの意見を追跡調査するうえで、どんなソーシャル・メディアを利用していますか?

Reddit、Twitter、Discord、Ubisoftのフォーラム、Steam…。でもプレイヤーから得ている情報に対して、SNSの意見はほんの一部ですね。他にも現在ゲーム内で起きている多くのことについて追跡調査をかけたり、あらゆるレベルのプレイヤーをスタジオに呼んでコンテンツのテストをしてもらったり、ユーザーにアンケートを送ったり、といったことをしています。

もちろんソーシャル・メディアのコミュニティに書き込まれていることも重要ですが、それは全体の一部なんです。ゲーム内のデータをトラッキングすることで分かる全プレイヤーの行動も、シージを理解するうえで重要なんです。特にシージ関連のソーシャル・メディアには出てこない少数意見も、データ上なら分かりますから。

集めたデータは、レインボーシックスの試合や、試合以外の対戦環境にどう反映させていくのでしょうか?

集めたデータやフィードバックは、あらゆる面での改善やバランス調整に活かされています。つまり私たちが目にしたもの、計測したもの、プレイヤーから聴取したことが、開発成果となっていくんです。プロリーグや上位ランクのプレイヤーから得たデータは、最高レベルでのバランス調整に使われます。

また、アンケートやソーシャル・メディアなどのコミュニティで語られていた不満についても、全体に影響を与えるバランス調整や、要素の追加・変更に用いられています。その好例がPick & BANの開発や、カジュアルモードのプレイリスト変更です。

どこから得られたフィードバックが優先される、といったことはありますか? もしあるなら、そうしたフィードバックはユーザー・リサーチ・チームが結論を出すうえでどのくらいの影響力を持っているのでしょうか?

フィードバックやデータというのは、それぞれに用途が違うんです。それぞれに価値がありますし、影響を与える範囲も限られています。すべてのプレイヤーにとって楽しいゲームにする。高いレベルでのプレイの場合は、戦うのも観戦するのも面白くなるようにする。それを常に目標としています。その目標を達成するために、あらゆる人々の「頭の中」を比較検討して、いついかなるときでも、人々の意見の全体像を描くようにしています。

たとえば1人のオペレーターにバランス調整を施す場合は、様々なデータの中から、ピック率と勝率の関係を示したデータに着目します。低ランク、高ランク、プロリーグのデータをね。それから広範なコミュニティでアンケート調査をしたり、RedditやTwitterでの議論を目にしたり、世界最高のプレイヤーや、シージの分析をしている人たちを招いて、繰り返しワークショップを催しています。

中でも高いレベルでプレイする人たちのデータは、意見の全体像をよりはっきりとさせ、仕事をやりやすくしてくれるんです。なぜなら彼らの動きは一つの試合だけでなく、他の試合でも高い一貫性がありますので、そこから得られるデータにも一貫性があるんです。一方で、ニューカマー・プレイリストとか、まだ経験の浅いプレイヤーをターゲットにした機能に取り組む場合は、そのプレイヤー層の動きやデータに着目していきます。

さらに言えば、プレイのレベルが高くなればなるほど、パッチやバランス調整への反応も早くなります。なのでバランスの面でどうやってゲームを進化させていくかについてアイデアを探したいときは、レベルの高いプレイヤーたちを最初に参照します。それとは対照的に、カジュアルでのルール変更などの大部分のユーザーに等しく影響を与える大きな変更を進めていきたいときは、全体のフィードバックやデータを調べあげます。あらゆるデータが、それぞれ異なる目標に影響を与えるので、特定の論点に対処するためにはどんなソースに着目していくべきか、検討するのに多くの時間がかかります。

そして最後に、多くの方が考えていることとは逆に、様々なタイプのプレイヤーから集められた様々なデータソースには、実のところ収斂が見られるんです。たとえば最も厄介なオペレーターとか、最も不人気なマップとかについても、多少の例外や数字の違い、理由の違いはあるにせよ、こういうのはブロンズからダイヤにかけて、どんなランクでも似たり寄ったりになるんです。

ニューカマー・プレイリストは、新規プレイヤーがスキルの近い人同士で戦うためのものです。この比較的新しい機能は、シージのコミュニティに対してどんな効果が期待できますか?

ニューカマー・プレイリストは、新規プレイヤーが限られたマップやモードの中でプレイングを学んでいくためのものです。こちらの研究によれば、一度にあまりに多くのマップやボム位置を見せられてしまうと、基礎の習得も遅れてしまいます。ニューカマー・プレイリストは、小さなことから始めていくのに最適です。試合でも使われているマップやモードで練習しながら、いずれは他のマップでも使えるあらゆることを学べます。

スキルレベルの違いやコミュニティの違いによって、異なるデータが得られたとします。たとえばYing。彼女は通常の対戦よりもプロリーグ戦の方が評価が高い。そういった点についてはどう対応していきますか。

正直なところ、魔法の秘薬はないですね。私たちにできるのは、争点を整理して、オペレーターなりガジェットなり武器なり、プレイヤーレベルの高低に関係なく、強すぎるものは取り除いていくことです。具体的には、ゲームの根幹を損なったり、オペレーター全体を変えたりしないように対処していきます。

Yingの場合は、チームで連携しながら強烈な突入をかけるのに非常に適したオペレーターです。プロの試合に比べて、ランクやカジュアルだと連携しながら突入していく場面は少ないので、Yingは現状で概ね適正ということになっています。そういうわけで前のパッチでは、彼女を根本から別物に変えることなく、かつほんの短い時間で彼女のガジェットを最大限に活かされてしまわないよう注意して変更を加えました。ほとんどの場合は、こんな風にアプローチしていきます。あるオペレーターを問題児にしている具体的なケースをつきつめて、解決に力を注ぐんです。

ミラノではどのチームが優勝すると思いますか?

参加する8チームは総じて、すべてのリージョンを見渡しても極めてレベルが高く、また今回はG2が参加していませんから、すべてのチームにチャンスがあると思いますね。そういうわけで、Team Empireはまだその強さや一貫性を保っていますので、彼らに賭けてみましょう!

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ミラノでのファイナルズは5月18日と19日に開催され、8チームがシーズン9チャンピオンの座を巡って争います。ミラノ大会の開催前や、試合中、そして大会閉幕後も、SiegeGGで最新情報のチェックをお忘れなく。

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