「門番」から「門の破壊者」へ シンガポールの古豪Aerowolf

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レインボーシックスの競技シーンが始まってから、Aerowolfは山あり谷ありの長い旅を続けてきた。約3年が経とうとしている今、彼らシンガポール・チームは世界大会への出場権を手に入れたが、そこまでの道のりは平穏とは程遠いものだった。今回は彼らの物語だ。

This article is translated. You can find the original here: Aerowolf of Singapore: From Gatekeepers to Gatecrashers

レインボーシックス シージはeスポーツ界では比較的新しい競技で、Defence of the Ancients 2 (Dota 2)やCounter-Strike: Global Offensive (CS: GO)といった怪物級タイトルのリーグに比べれば歴史は浅い。しかしシージのリーグにも既に、紛うことなき「古豪」チームが揃っている。こう言うと世界の観衆は、Evil Geniuses (前Continuum、Biggity Boo Bop)やG2 Esports (前PENTA Sports)、あるいはFaZe Clan (前Santos Dexterity)のを思い浮かべそうだが、APAC(アジア太平洋)リージョンについては馴染みのない彼らのことだから、恐らくこの地域における最古参チームの存在を失念していてもおかしくはない。

Aerowolf、戦いの系譜

レインボーシックス シージのプロリーグが始まったのは、ゲームがリリースされてわずか4ヶ月後のことで、それはまだゲームが発売されていなかった地域にも大きな衝撃を与えた。シーズン1はあっさり幕を閉じて、シーズン2のオンライン・リーグが近づきつつあった頃、アジアが目を覚ました。Team Envyとして知られたシンガポール人の一党が誕生したのもこのときだ。初陣の相手は父ノ背中のほか、後のCloud9、FAV Gamingとなるチームたち。この史上初となるアジア・コミュニティ杯でEnvyは優勝した。

彼らがその後も絶えず研鑽を積んでいけたのは、シージに対する愛以外の何物でもなかった。アジア各国のチームのために日本が主催した国際エキシビションマッチや、オーストラリアでのCyberGamer杯にも参加し、その後もさらに練習に励んだ。そしてシーズン3の終了時、これまでの鍛錬が果たしてどんな実を結ぶのか見定めていた頃、「シックス・インビテーショナル」なるイベントが発表された。突如として、自分たちの努力に意味が生じたのだ。

4回に渡るオンライン予選によって4つのアジア・ベストチームが選り抜かれ、インビテーショナルへの出場を賭けた最終予選が行われた。第1回予選で優勝したEnvyはこの最終予選を経て、アジアからは初の世界大会出場チームとなった。現在のRogueであるeRa Eternityと対戦したEnvyは、Glen “Lunarmetal” SuryasuptraがMontagneで押していく作戦でクラブハウスを取ったものの、そこがシンガポール・チームにとっての限界だった。遙かに綿密に組まれたシステムを駆使する北米チームeRa相手に、1マップ取れただけでも記念碑的と呼べるほどの戦果だった。このときAdrian “Ysaera” Wuiは2年間の兵役のうちの半分を終えたところで、インビテーショナルで戦うために一時帰宅させてもらえるよう軍司令官らと交渉せざるを得なかったことや、そのせいで大会に向けた準備がほとんどできなかったことを鑑みると、この結果は実に感慨深いものがある。

当時の彼らはアジアにおける序列一位のチームだった。しかし程なくして、二位にさえ辿り着けない長い旅が始まってしまう。オーストラリアとニュージーランドが加わったAPACリージョンに、いよいよシーズン6からプロリーグ制度が導入されたとき、Envy改めTeam CryptiKとなった彼らは優勝候補の筆頭だった。しかしトップ2チームがプロリーグ・ファイナルズへ出場できるAPACファイナルズの舞台で、彼ら東南アジア代表チームは、シングル・イリミネーションの最初の試合で追い詰められてしまった。現在のFAV GamingであるeiNs相手に、第1マップではそれなりの戦いぶりで勝利を収めたものの、第2マップはオーバータイム最終ラウンドで敗れ、第3マップのカフェでも、オーバータイム最終ラウンドで防衛有利の状況でありながら敗れてしまった。ラウンド残り15秒の時点で、両チームの全メンバーが生き残っているという形だった。

シンガポール・チームは初めて苦杯を嘗めされられ、その味を忘れ去るまで2年間苦しみ続けた。事あるごとに、カフェでの敗戦が彼らの脳裏をよぎるようになったとか。

Team CryptiKは大会準優勝チームになっても不思議ではなかった。しかしAPACファイナルズのルールがシングル・イリミネーションであったため、世界大会の舞台に出場することは結局叶わなかった。「序列二位」。間もなくこの言葉は、ありがたくないマントラとなってチームにつきまとうようになる。一度の例外を除いて、その後の7つのトーナメントではすべて、「彼らを倒したチームが、最後に全体優勝を飾る」というパターンになったからだ。2018年の7月からTeam CryptiKからAerowolfとして知られるようになったチームには、APACの「門番」という不本意な渾名がつけられた。

その次に参加したシックス・インビテーショナル2018のAPACオフライン予選大会でもAerowolfは優勝候補だったものの、Xbox部門から転身してきた当時のMindfreak(現在のFnatic)に対し、本戦出場を賭けたトーナメントの途中で二度対戦し、(この手の大会ではよくあることだが、)二度とも敗れてしまう。続くシーズン7APACファイナルズでも、FnaticはAerowolfを蹴り倒してチャンピオンの座に輝いた。さらにシックスメジャー・パリのAPACオフライン予選では、Element Mystic (現Cloud9)がAerowolfを倒して本選へと出場。東京で行われたシーズン8のときも、野良連合がAerowolfを倒してファイナルズ本戦に出場した。

ロースター変更:「最高の5人」を求めて

Aerowolfの現在のロースター。左から、SpeakEasy、Lunarmetal、MentalistC、HysteRiX、Ysaera、jrdn (Photo: Lunarmetal)

Aerowolfは未だに判然としていない自分たちの強みを探求すべく、ロースターを取っ替え引っ替えしていった。インビテーショナル2017のメンバーから、Nicholas “Korey” Lim、Harri “Quantic” Hong、Warren “Reveck” Limがチームを去った。代わりにやってきた新顔としては、シーズン6にRichard “shinbagel” Shin、シーズン8にはAllessandro Billy “Array” Adi Dwiputra。さらにシーズン9の中ほどには、控えメンバーとしてNi “SPirited” Tung Mingが、そして公式戦出場は一度も無かったが、Jasper “Xesoxs” Tayなる人物もいた。しかしLunarmetalとYsaeraが探していた答えには一向に辿り着けない。シーズン7にJeremy “HysteRiX” Tanを採用しても同じことだった。

こうしたロースター陣の「ぶれ」は、シーズン9のオンライン・リーグが始まったところで折り悪くも限界に達し、成績はチーム史上最悪のものとなってしまった。当初Reveckの代役として引っ張ってきたXesoxsは、時間が足りないせいで結局チームに馴染むことができなかったし、シックス・インビテーショナル予選を先に行ったことでプロリーグの日程がずれ込み、SPiritedがオンライン戦に駆り出されることにもなった。しかしAPACにおける麒麟児の一人、Patrick “MentalistC” Fanがいた。2016年からAerowolfに加わっていた彼は、出場可能な年齢に達するまでは控え選手だったものの、オフライン予選の直前に18歳になった。変化の兆しに乗じて、MentalistCはシドニーに同伴した。

「正解:APACのトップチーム間にはスキルの差がある。

 不正解:スキルの差を乗り越えることはできない。

来シーズンのAerowolfの選手陣を紹介する。当面はこれが最後のロースター変更になりそうだ。」

だが、またしてもチームは敗北した。もっとも今回の対戦相手は大会優勝チームにはならなかったが、運命の仲間を探す旅はさらに続くことになった。シーズン前半を終えたところでArrayがチームを去ったものの、入れ代わりにMatin “SpeakEasy” Yunosが入ったことで、チームはもう一段階変化していった。ロースター変更もあって不運にもチームの連動性が落ちたために、代償としてAerowolfはScrypt E-Sportsに0-2という大惨敗を喫し、APACオフラインへの連続出場が止まりかねない窮地に追い込まれてしまった。だがすべてはXavier Esportsが2回連続で回線障害を起こし(つまり最終戦で1ポイント手に入った)、同時にGeneric eSportsがScryptを相手にまさかの2-0という奇跡もあったおかげで、彼らは1ポイント差のぎりぎりでオフラインに出場することができた。

シーズン9APACファイナルズでは、Cloud9と契約したばかりの韓国ロースターがシンガポール・チームを破ることに期待が集まっていた。それも2-0の大差をつけて。だがAerowolfはそんな筋書きを破り捨ててみせた。Cloud9を7-1、7-1と粉砕し、Fnaticと4度目の顔合わせを果たした。ここでもまた、「門番の呪い」が鎌首をもたげる。第3マップで5-5と巻き返したところで、ディフューザーのバグに見舞われて敗戦。またしても最後にチャンピオンになるチームに敗れるという形になった。

その後、AerowolfはAPACから唯一のチームとしてAllied Esports Minorに招待された。16チームが入り乱れるこのトーナメントで優勝すれば、シックスメジャー・ローリーへの出場権が手に入る。想定内ではあったが、優勝はできなかった。だが結果以上に衝撃的だったのは、そのとき味わった負け方だ。DarkZero Esportsには7-8、Susquehanna Soniqsにも7-8、そしてLeStream Esport (現the Vodafone Giants)には2-7だった。後にLunarmetalが明かしたことだが、そのとき彼らのメンタルはどん底まで落ちていたらしい。

Allied Esports Minorにおける下位8チームの全体統計

事態が好転し始めたのは、彼らシンガポール・チームがXavier Esportsに一年ぶりに勝利してからだった。それも2-0という大差は、これまで一度も成し遂げられなかったことだった。同じ結果が、その後のシックスメジャー・ローリーAPACオフライン予選でも繰り返された。だがここでまたしても、最後にチャンピオンになるチームに途中で敗れてしまう。

ここに至ってなお、Aerowolfに求められる変化とは何なのかが、まったく分からないままだった。オフライン予選の前の試合でも、NEX EsportsとScrypt E-Sportsにそれぞれ1マップでドローがあった。シーズン全体に響くようなものではないにせよ、この成績はチームにとってはまさに最悪のものだった。Aerowolfの問題点は相当に根深いところにある。だが何が間違っているのか、チームメンバー自身にさえ分からないようだった。ほとんど毎回、彼らはほんのわずかの差で敗れて序列二位に甘んじている。運が悪いのか。実力が無いのか。それとも両方か。いつも何かが欠けていた。シージにフルタイムで打ち込めないせいだと指摘する者もいれば、東南アジアが単にリージョンとして弱すぎるのだと言う者もいた。その一方で、チームが誕生してからというもの、未だにLunarmetalとYsaeraのオリジナル・メンバーがその手綱を握っていることについては敢えて誰も問題視しないようにしていた。

シージだけでは生きられない

兵役は、すべての健康優良なシンガポール男性の生涯における義務となっている (Photo: The Straits Times)

問題点の一つ一つがそれぞれどんな影響を及ぼしているのか、数字で表すことはできない。だが選手たちが最も毒されている点は、「シージにフルタイムで打ち込めないこと」と見て間違いなかった。FnaticやCloud9はフルタイムでシージができているが、スキルがあるにも関わらず、Aerowolfにはそれが叶わない。理由の一つは徴兵制度だ。Ysaeraもシックス・インビテーショナル2017の準備段階でこの問題にぶつかっていた。チーム内に軍人はいないが、彼らの頭上には常に軍刀がぶら下がっている。中でもHysteRiXは2020年の1月頃から兵役義務を果たさなければならないことを、彼自らも承知している。SpeakEasyと、新しい控え選手のJordan “jrdn” Chengもまた、学業を終えたら徴兵される。

フルタイムでシージができないもう一つの理由は、どこのeスポーツでも同じ事だが、学問だ。唯一の例外であるYsaeraを除いて、Aerowolfの選手たちはあらゆる試合に出場するその合間に、勉強にも励んでいる。SpeakEasyとjrdnは共に職業訓練学校に通っているし、HysteRiXはポリテクニック(3年制の高等技術専門学校。日本の高等専門学校のような位置づけ)の生徒、MentalistCはジュニアカレッジの学生だ。Lunarmetalも大学の単位を取得しなければならない。

幸いにしてSpeakEasyとjrdnは学業としては最も平坦な道のりだが、それでもきついことにかわりはない。シンガポールの社会は極端なまでの実力主義だ。学校で優秀な成績を残し、可能な限り良い仕事にありつこうという計り知れないプレッシャーに誰もが苛まれている。給料が良ければ家族を養って、自らも家を持つことができる。最も実入りの良い仕事を得るためには大学の単位一つでさえ不可欠であり、社会の下層に落ちればまともな選択肢は消えていってしまう。

「練習したくても明日は試験があるときの図」

平均的な学校よりも厳格なポリテクニックに入学できたHysteRiXの場合はさらに厳しい。またMentalistCが感じている勉強というプレッシャーはいっそう強い。シンガポールのジュニアカレッジというものは事実上、良い大学へのチケットに繋がっているのだが、そのためにはもちろん良い成績を残さなければならないからだ。シージ選手としてのキャリアと学業を両立させるのは言うほど容易いことではなく、18歳のMentalistCは心身共に疲弊している。特に辛いのは大学生のLunarmetalだろうが、彼は勉強と選手としてのキャリアをうまくやりくりして、できる限り最高の水準を保っているように思える。

選手であり続けるための苦闘

学業とアルバイトのバランスを取りながらもAPACオフラインでは8敗を喫したことで、他のメンバーと同様にLunarmetalとYsaeraの精神にも重い負担がかかっていた。Aerowolfの挑戦が始まってからの約二年は失敗続きの二年だった。チームは一つにまとまりつつあったし、選手たちも往年の姿を取り戻しつつあったものの、それでも2017年の時の最高記録には到達できていなかった。今となっては初めてメジャー大会に出場したとき以上に、プロリーグ・ファイナルズやマイナー大会への出場権が宝物のように見えた。これほどの辛酸を舐め、除け者にされ続けても、なお戦い続けられるものなのかと人々は疑問に思った。実際のところ、Aerowolfの面々はその答えに窮していた。LunarmetalとYsaeraは毎日のように引退を考えていたという。  だが家族に対する的外れな孝行心とでも言うべきか、あるいはファンからの熱烈な応援もあってか、彼らはふらつきながらも歩き続けた。

「俺とシージの今後について」(リンク先は未訳)

しかしとうとうMentalistCが、ストレスなどの要素が重なりダウンしてしまう。中国国籍を持つ彼がシンガポールに住んでいられる唯一の理由は、彼の父親が国内で職を持っていたからだ。間の悪いことに、彼の父親はプロリーグ・シーズン10の期間中に国外へ転勤することになった。つまり彼のシンガポール生活は、ここでの学問を理由にした学生ビザという一点だけでつなぎ止められていた。両親とは当初、フルタイムでシージに打ち込むために2020年は勉強も仕事も空白期間にする旨を同意をしていたのだが、そんな夢にも急ブレーキがかけられた。シンガポールに住めなくなってしまうとなれば、学校を休むわけにはいかない。となれば当然のように、シージと両立させようとすれば健康を、成績を、ひいてはプレイングを損なうという悪循環に陥ってしまった。東南アジアとは別の、たとえば香港のような場所でフルタイムでシージに打ち込もうなんて、選手として成功していなければメディアへの露出も無い彼にとっては、およそ現実的な選択肢とは言えなかった。こうして彼に残された選択肢は一つ、無期限のサバティカル休学を取ることになった。

運命はここにきて、なお彼らの物語に余計なひねりを加えてきた。シーズン10のAPACファイナルズが近づいてきた頃、Aerowolfの第一試合がFnaticとの対戦になると告げられた。過去4回戦って、一度も勝てていない相手だ。おまけにその次の対戦相手はCloud9か野良連合、いずれも過去の試合では圧倒的な力の差で全敗している。オンライン・リーグでは10勝1敗1分という輝かしい成績を残したにもかかわらず、彼らシンガポール・チームはリーグを1位で終えることができなかった。その代償を払わされることになった。

だが彼らのメンタルには突如としてスイッチが入り、やがて勝利の方程式を生み出すことになる。過去4回のFnaticとの試合では僅差で敗れていたものの、五度目はなかった。Aerowolfは大激戦を7-5、5-7、7-5のスコアで制し、Fnaticに勝利した。中でも第3マップでは途中まで5-0、かつてのAerowolfがここから敗戦したことのある形だった。

Fnaticに勝利し、号泣するMentalistC。シーズン10APACファイナルズにて (Photo: ESL)

勝利が決まった瞬間、幾年月ものストレスから解放されたMentalistCの目からは涙が堰を切ったように流れ出した。これまでの努力が報われた。努力は報われるのだ。Lunarmetalもこの勝利に我を失い、試合後のインタビューでも自制心を保ち続けるのがやっとという有様だった。

彼らの歴史的勝利はさらに続き、シーズン7以降すべての世界大会に出場し続けていたAPAC序列2位のチーム・野良連合に、7-1、7-2という殺戮ショーを起こした。Aerowolfには突然それができるようになったのだ。両手を高く上げて喜び合った。間もなく世界中からやって来る敵に挑戦していく彼らだが、二日のうちにFnaticと野良連合の両方を撃破したチームとして、今シーズンのAerowolfは人々の記憶に残ることだろう。中でもSpeakEasyはシージの歴史書にもその肖像が添えられること請け合いだ。

世界への門は閉まろうとしていたが、Aerowolfは「門番」という汚名を振り払い、ここに「門の破壊者」となった。

チームは常滑で行われるシーズン10ファイナルズへの出場権を得ただけでなく、Wildcard Gamingを倒してリージョン1位という栄誉にも浴した。一連の成果への見返りとして、シージ界で最大のトーナメントであるシックス・インビテーショナルにも3年ぶりに直行できる。

そして今、何をすべきか

Lunarmetalが作り上げた勝利の方程式とは、彼らが前だけを見つめ続けるための一つの指針だった。幾年にも渡る失敗が重くのしかかり、シージをしながら勉強や仕事もしなければならないストレスもかさんでいたチームの士気は、いつ何時でもあっさり失われかねない状態だった。だが今回の大会でLunarmetalが強く心がけていたことは、一連の難題に取り組むにはチームとして準備を万端にし、終わったラウンドのことはすぐに忘れて、次のラウンドに向けて気持ちを新たに切り替えていくということだった。

もし精神的にどん詰まりになって、過去8回も世界大会に出るチャンスを逃してきたことに囚われて続けていたら、シーズン10でまたしてもチャンスをふいにする恐れがあった。国境は落とすべきマップではなかったと言って良いだろう。Lunarmetalが第1ラウンドで不注意なミスをし、またFnaticの選手たちが前線を下げ始めたタイミングで、Ysaeraが設置を阻止しようと一人でラッシュをかけていなければ、と思う。クラブハウスでもほとんど負けそうになっていた。Aerowolfは5ラウンド連続で落としてFnaticとのスコアが5-5の同点になってしまった。だが精神面での準備がここにきて報われ、Aerowolfはなおもしがみついていた。

今回、チームはまずVodafone Giantsと対面する。7月に戦ったときは2-7と粉砕された、恐るべきヨーロッパチームだ。シンガポール・チームに万が一ここで勝ち目があったとしても、次の相手もDarkZero EsportsかFaZe Clanだ。とはいえ、いかにGiantsが勝ちそうだと言われていても、Aerowolfを倒すのは容易ではないだろう。他リージョンのチームは自分たちの地域内に戦える相手がいて、こちらはスクリム相手がAPACチームに限られている。しかも作戦を練り上げるのは学校へ行く途中か、大会の直前だ。しかしそれでもAerowolfなら、負け越している試合でも切り替えてラウンドを取り返すことができる、敬意を払うべきチームだ。脅威でさえある。ほとんどあらゆる機会で敗北してきたにも関わらず、プレイを続けるためにあらゆるものを犠牲にしてきたことで、チームの指針やガッツは誰にも抗えないほどの強さを秘めている。

シーズン10ファイナルズの対戦表

今後についてだが、Aerowolfには小さな躍進が見込まれている。Lunarmetalは2020年の5月に卒業し、フルタイムでシージに打ち込める。もっとも、MentalistCがどうなるかは未だ定かではない。常滑のシーズン10ファイナルズでの数日間はプレイするが、シックス・インビテーショナル2020、さらにはその先の未来についてはまだ何も分かっていない。現状としてはjrdnが彼の後釜になりそう、というくらいだ。HysteRiXが1月に徴兵されることも、チームの準備には間違いなく障害になる。だが彼の役職は前目のオペレーターではないので、インビテーショナルに向けてスキル面の準備をするのは幾許かやりやすいだろう。

彼らの人生をもっと楽にしてくれそうな道は、企業内で昇進することだ。つまり注目してもらえそうな選手になることだ。企業としてのAerowolfには内部の問題こそまったく無いものの、規模が小さいために選手たちを支援するための賃金も限られている。

ともあれ何が起きようとも、Aerowolfは次の4ヶ月は世界中から目を向けられる。つまりその間はみんなで一緒にいられるわけだ。もしも彼らの歴史がどんな形であれ続くのなら、同朋たちからの支えがあろうとなかろうと、いずれは夢を実現させる道を見つけるのだろう。