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一発ネタのチームから「夢のチーム」へ。'92 Dream Team

彼らが知られるようになったきっかけは、恐らくDarkZero Esportsとの珍勝負だろう。プロリーグにやって来るこのドリームチームについて、今日はもう少し詳しいことを話してみたい。

午後と言うにはやや遅く、すっかり早朝との境目を跨ぎ超そうとしていたその時間、Parker "Interro"Mackayは自分のコミュニティ内で、シックスインビテーショナル北米予選のうちの数試合を配信していた。彼自らによる実況も、そろそろまとめに移ろうとしていたところだった。Spacestation Gamingと元Nobleのメンバーで構成された無所属チームの接戦が終わったその後のこと。レインボーシックス史における、絶対に忘れられない一戦が始まった。

東海岸時間で深夜の12時15分頃だった。Hyena、Rexen、Filthy、XecratioN,、そしてYardySosaからなるこのチームは、北米でも屈指のキル取り集団であるDarkZero Esportsとの試合に臨んでいた。配信サーバーに参加していた人々のうち、彼らについて知っている者はほとんどいなかった。キャスターのInterroの他、そこにはKevin "easilyy" SkokowskiやTroy "Canadian" Jaroslawski、Rob "Flynn" Flynnといったプロ選手たちも顔を出していた。結果的に、彼らの絶大な後押しを受けたことで、その試合はシージ界のメインストリームにまで知れ渡ることとなった。「キッチン・空き部屋」における、屈伸を使った強引なクリアリングや、大いに盛り上がったHyenaによる独自ルール、「汝大いにキルを求むれば、すなわちDocを召されよ」に至るまで、その一夜の出来事は本当に短いものだった。

DarkZeroには0-2で敗北した当の「ドリームチーム」だが、2019年の5月には、チャレンジャーリーグの人気チームSusquehanna Soniqsをプレイオフ決勝で破り、プロリーグへの参加を決めた。夢が現実のものとなった。しかし、このチームがどこから来たのかは未だほとんど知られていない。「'92 Dream Team」という、まさにうってつけの名を持つ彼らは、いかにして栄冠を掴んだのだろう。これは彼らの物語だ。

 

「最初はチーム名についてまったく何も考えてなかった。このチーム名は何なのか、本当に誰も気にしてなかったんだ」。そう語るのは3人のコアロースターのうちの1人であるKian "Hyena" Mozayaniだ。

‘92 Dream TeamはかつてのStrength。United States Nationalsにおける悪名高いチームの残党たちによって作られた。当時はYardySosaの名で知られていたAdam "Drip" Kolodkinは、CloudStruckや、後にチームメイトとなるCoal "Doodle" Phillips 、XecratioNといったよく知られた選手たちと共に、現在Organized Chaosとなっているチームの最初期のバージョンに加わっていた。United States Nationals予選でティア2クラスのチームを次々に圧倒してみせた後、YardyはHyenaに接触した。

初めてYardyとプレイしたときからずっと、あいつは才能に恵まれてるって分かってた。ああいう予選で、統計上は遙かに優れているはずのチームを倒しまくってたんだから。確か、あいつらはUSN予選でDisrupt Gamingも倒してたと思う。Disruptには誰かの代理でHotancoldが出ていたんだけど、それでもYardyは本当に上手いと思ったんだ。何と言うか、上がり調子のプレイヤーって感じだった。カウンターを組み立てるのがとても上手かった。で、あいつの方から俺のところに来たんだ。「おい。チャレンジャーリーグを目指してみないか。あそこはお前よりもレベルの低い選手ばっかりだろ。このチャンスに乗れば、まず間違いなく俺たちでドリームチームを作れるぜ。俺たちはそれぞれ自分の仕事をやらせたら最高のプレイヤーなんだ。それが一つに集まれば、何だってできる。」みたいなことを言ってた。

- Kian "Hyena" Mozayani

かくして、'92 Dream Teamが誕生した。Hyenaはそれから元チームメイトに声をかけた。DreamHack Austin 2018でTeam Nitroxとして共に戦ったその人物はRichie "Rexen" Coronado。彼を説得してチームに加わってもらった。さらに XecratioN とFilthyを旅の道連れとして、五人のメンバーが揃った。シックス・インビテーショナル2019のオンライン予選に出場した彼らは、そこでレインボーシックスの世界においてかつてないほどのエンターテイメントを演じてみせた。

Lauren "Goddess" Williamsを獲得したばかりのElephant Gangに勝った後、彼らはPro Leagueにその名を連ねるDarkZero Esportsとの対戦に備えていた。しかし日程が夜更けまでずれこんで、さらに翌日には別のトーナメントもこなさなければならなかったので、彼らは自分たちの力を最大限に引き出したプレイはできないことを認めていた。

俺たちは、「くそっ、 Interroが配信してるし、けっこうな数の視聴者が見てるのか……。じゃあここは一つ、面白いものでも見せてやろうじゃないか」という流れになったんだ。Echoが使えるなら、普通のチームならDocよりもEchoを使うと思う。でも俺はDocをピックして周囲の度肝を抜いてやった。ショータイムだ。あらゆるところでピークしたよ。やりすぎってくらいに。でも俺たちには関係なかった。試合を終わらせてさっさと寝たかった。次の日のチャレンジャーリーグ予選に備えて、ぐっすり眠っておきたかったんだ。

- Kian "Hyena" Mozayani

その試合は彼らを一躍有名にした。配信ではキャスターもプロたちも、叫び声を上げて爆笑していた。HyenaがDocに「昇格」したことや、Yardyの地下階段でお粗末なクリアリングをしたことなど、その試合は確かに人々の記憶に残った。しかし、その時点でこのチームは単なる一発ネタのチームに過ぎなかった。Filthyにとっては、そこが旅の終わりとなった。

シックス・インビテーショナル2019のオンライン予選に出ることは、Filthyの仕事の労務規定との間に齟齬を生んでしまった。そこで異論なく、彼は出て行くこととなった。インビテーショナル予選よりも前の時点で、Doodleは既にチームの一員となっていた。彼はラスベガスでのUSNプレイオフが終わったところで、Team SiNisterを去ろうと決めていた。

単純のようで、同時に難しいことでした。インビテーショナル予選の頃に移籍して来たから、チャレンジャーリーグ予選の前には一緒に戦うことができたんです。唯一の問題は、加入する二週間前に僕がちょうど顎の手術を受けていたことですね。最初の4週間か5週間くらいは、僕の口は妙な具合に閉じたままだったんです。

- Coal "Doodle" Phillips

'92 Dream TeamはFilthyの代わりにDoodle を加えて活動を続け、DarkZeroとの一戦があったちょうど翌日には、シーズン9チャレンジャーリーグのオンライン予選に出場した。オープン予選の全試合を無敗で抜けた彼らはトーナメントへと進出。そこでの戦いに向けて、XecratioNに去ってもらい、OwtaCtrlを獲得することになった。

チームが一つになるうえで、XecratioNの影響は本当に大きかった。選手を誘うときは彼が大きな役目を果たしてくれていたんだ。それでも、XecratioNは俺らとはうまくなじまなかった。だいぶ年上だったからね。俺たちの多くは19歳とか20歳だけど、彼は…彼は26歳だったっけ? XecratioNとやっていくのが難しくなったんだ。だから彼には外れてもらって、昨シーズンのチャレンジャーリーグでもプレイしてたOwtaCtrlに声をかけた。でも、Owtaはふざけた野郎だったよ。あいつはとても……今なら言えることなんだけど……あいつは、完璧なプレイヤーだったんだ。何でもできるし、経験も山と積んでるし、万能型のプレイヤーで、おまけにプレッシャーにも強かった。

- Kian "Hyena" Mozayani

NAチャレンジャーリーグ予選の対戦表。画像提供: Liquipedia.

プレイオフを前にして、‘92 Dream TeamはVicious Gamingのロゴマークを引き継ぐことでついに一つの組織となった。トーナメントではわずか1マップを落としただけで、チャレンジャーリーグへの参加資格を獲得した。夢は実現したかに見える。しかし彼らの見据える目標はもっと大きかった。すべての夢を上回るほどの大きな夢だった。途轍もない好パフォーマンスを見せたにも関わらず、Owtaの存在はチームが連携を発揮していくうえでは支えにならなかった。

そこでシーズン9に向けて、チームOrganized Chaosから Bombsが加わり、同時にObey Allianceの元コーチ、Trevor "KenZ" Kenzieにもチームを引っ張ってもらうことにした。だがKenZは組織側と折り合いがつかなかったので、そこでさらにCloud9の元コーチ、Anthony "ViiRuS" Ybarraに入ってもらうことになった。

あのときは私がCloud9に入ったときと、とてもよく似ていました。Tomasは僕と一緒に他のチームの動画を見るのが好きで、毎日のように一緒に組んで仕事をするようになったんです。

- Anthony "ViiRuS" Ybarra

俺たちが「頭一つ抜きん出た」チームになれた理由は単純だ。俺たちは頭を突き合せて議論を交わしていたんだよ。それと、プロリーグのチームにいたことがあって、プロリーグの選手をコーチしたこともある人から、第三者として意見をもらえたのも良かった。お互いに「批判を受け容れろ。これを認めろ。試合中にこれができていない。仲間にこれが報告できてない…」とか言い合うんだ。

こういうのが本当に役に立ったと思う。彼が俺たちのためにしてくれたものの中でも、こういう議論をさせてくれたことが何より大きかった。試合中もずっと、俺たちのことを落ち着かせてくれる。まだ学ぶことはたくさんあるけど、俺たちはかなり変わったチームだから、ViiRuSの方も自分のコーチングの仕方を修正してくれたんじゃないかな。

- Kian "Hyena" Mozayani

NAチャレンジャーリーグの成績表。画像提供: Liquipedia.

Vicious Gamingとして、彼らはチャレンジャーリーグを6勝4敗4引き分け、シーズン4位というなかなかの成績で終え、プレイオフへの出場権を得た。しかしシーズン後半ではBombのパフォーマンスが不安定だったこともあり、連携面ではまごついていた。チームには変化が求められていた。幸いにして、Hyenaには幾らかそのツテがあった。

Tomasからメッセージをもらったのを覚えてるよ。Excelerate Gamingから放出されることになったって。思えばあいつはチームNomadにいた頃からずっと気の合う友人だった。以前からずっとスクリムをしてたんだ。あいつの試合は全部覚えてたし、統計を見た限り、俺の意見ではTomasはExcelerate Gamingで二番目に良いプレイヤーだった。(中略)

最初は誰も変化を望んでなかった。このままでもやっていけるって思ってたんだけど、それからTomasがフリーエージェントになったって知ったんだ。俺たちはチームとして話し合って、Tomasのために変わるべきなんじゃないか、他のプレイヤーを探すべきなんじゃないかってなった。どのみち目当てはTomasだった。Excelerate Gamingは彼に良くしてくれたよ。契約を終わりにして、俺たちのチームに加わるのを許してくれた。俺たちもちょうどVicious Gamingとの契約が終わる頃だったから、Tomasと組むのにはサインをもらう必要さえなかったんだ。(中略)

Tomasは試合を作れる選手だ。俺たちみんなと同じように。Rexenにせよ、YardyやDoodleにせよ、俺らは全員がラウンド中の展開を瞬く間に変えることができる。オープニングキルを取りにいくのも得意だし、いつでも誰でも2キルなり3キルなりして、流れを変えられる。だから俺はこう言ったんだ。「Tomasに入ってもらおうぜ。あいつもガチな野郎だしさ」。

Tomasはハードブリーチャーじゃないけど、Bombsがハードブリーチャー兼サポートをやってくれた。Tomasにブリーチャーを無理強いしても仕方ない。プロリーグから出てきたばかりのあいつは、俺たちにはできないようなオープニングキルを取ることができた。そういうプレイが許されるような役割をやってもらうことで、あいつも試合の流れを変えるプレイができるようになった。

- Kian "Hyena" Mozayani

サポート役に転身したHyenaは、Tom "Tomas"Kakaのプロリーグでの経験から学び、プレイスタイルや立ち回りを磨き上げ、Tomasの加わったチームに自らを合わせていった。チャレンジャーリーグが終わる前にVicious Gamingから去ることに決めた彼らは、プレイオフで大番狂わせを起こした。北米チャレンジャーリーグにおける強豪Organized Chaosと、ファンの間の本命だったSusquehanna Soniqsを倒し、そのままプロリーグへの参加を決めた。

こうして夢は成就した。一発ネタみたいな試合から始まった‘92 Dream Teamは、プロリーグ出場という夢を実現した。競技シーンにおける三下のスクリム要員からスタートしたこの五人は、とうとうシーズン10からプロリーグに初参戦する。レインボーシックスにおける最高の栄誉の一つを掴み取ったのだ。しかし彼らはこれから、プロリーグと今度のベガス・マイナーに向けて、適応と進化を続けなければならない。

チームになってしばらく経ってるし、それぞれ時間もあったから、今度のオフラインではトーナメントで優勝するチャンスだと思ってるよ。仲間のみんなを信じてる。そうすれば面白いショーが見られるよ。

- Richie "Rexen" Coronado

思うに、次のプロリーグは史上稀に見る激しい戦いになるでしょう。そこに加えて、主催者側はリーグ戦やオフライン大会の賞金総額を増やしてきた。賞金の奪い合いに直接参加できるとまでは言わないまでも、誰もが私たちのことを降格候補の弱小だと思っているわけだから、次のシーズンでは彼らが間違っていたことを証明しなければね。もちろんラスベガスでも素晴らしいショーをお見せしますよ!

- Anthony "ViiRuS" Ybarra

僕らはチャレンジャーリーグの平均以下のチームから、プロリーグチームにまでのし上がった。TomasやViiRuSがいてくれなかったら、チャンスはまず無かった。プロリーグに新入りとして参加するのは本当に良い気分だよ。次の数ヶ月のうちにどこかの組織にうまく後ろ盾になってもらえたら、週に40時間働くのをやめて、すべての時間をシージに打ち込めるんだけどな。

そうすればTeam Empireみたいになって、プロリーグの最強チームにだってなれるよ。今度のシーズンは、僕らにとってとても重要な意味がある。誰にとっても初めての丸々1シーズンを迎えるわけだから、波を起こしてやりたいんです。

- Coal "Doodle" Phillips

僕たちの成功を望んでない人もいるだろうから、チームとして注目を集められるようになりたい。ベガスの結果がどうなろうと、重要なのは今シーズンのプロリーグだろうから、僕たちの実力に相応しいリスペクトがもらえるようにしたいです。

- Tom "Tomas" Kaka

こんなところまで来ちまって、驚いたよ。半年前の時点で、USNのStrengthにいた俺やDoodleみたいなのが、プロリーグに参加するなんて誰が予想できただろうな。

この気持ちは言葉にできないね。目標は高く保つ。成功したいなら、そうしていかないと。俺たちなら、世界のどんなチームともやり合える自信がある。シーズン10や今度のマイナーでそれを証明したい。

- Adam "Drip" Kolodkin

これはまだ過程なんだ。俺もみんなももっと学ぶべきことがある。完璧な人間なんかいないけど、プロリーグにいる以上、より完璧に近いところを目指していく必要がある。俺たちはそれぞれの役回りをこなすのがとても上手い。たとえば俺は射線の確保とロックが得意だし、Rexenはファーストキルを狙いに行ってくれる。試合を通して、全員に得意分野があるんだ。五人それぞれが力を合わせれば、なんだって上手くいく。

最初にインビテーショナルの予選で配信されてから、俺たちにはたくさんのサポーターがついたのは知ってる。みんなにありがとうって言いたい。チームメイトにも言いたい。本当に心から、仲間のことを信じられるんだ。俺たちには賛否両論あるだろうけど、俺たちはそれぞれ一個人としても、一人の選手としても、長い道のりを歩んできた。俺らのファンが、このチームを誇りにしてくれる日が楽しみだよ。「俺らのファン」なんて言うのは、どうも変な感じがするけどな。俺やチームのところに大勢の人が集まってきてくれるなんて、未だに夢みたいだ。でも本当に、ありがとう。

- Kian "Hyena" Mozayani

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‘92 Dream Teamの戦いは、来たる6月7日から9日にかけて行われるAllied Esports Las Vegas Minorと、北米プロリーグ・シーズン10で見られる。

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